秘密の地図を描こう

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「キラが、動いた?」
 ミゲルが即座にそう聞き返してくる。
「はい。こちらではなくアークエンジェルに合流するそうです」
 こちらに来てくれればいくらでもフォローができたのに、とレイは心の中で呟く。しかし、それがキラの意思である以上、反対はできない。
「ここにはアスランとシンがいるからな」
 どちらか片方だけならばよかったんだが、とため息をつきながら彼は視線を移動させる。
「また、ですか?」
 つられて顔を向ければ、ここ最近、見慣れた光景が繰り広げられている。
「全く、ある意味シンにも感心するよ」
 欲もまぁ、あそこまで突っかかる理由を見つけられるものだ、とミゲルは苦笑を浮かべた。
「いい意味でも悪い意味でも、あいつは執念深いですから」
 キラへの執着ぶりでもわかっていたが、とレイは言い返す。
「だな。キラの方はいい意味で落ち着いてくれたが……アスランはキラとは違うタイプだからな」
 一見優等生で隙がない。しかし、その実はへたれだからなぁ……とミゲルはさりげなく辛辣なセリフを口にしている。
「しかも、シンに負けないくらい執念深いし」
 まさしく、同族嫌悪、ではないだろうか。
「二人とも、お互いに折れるつもりはないようだしな」
 その上、それぞれが執着をしている《キラ》を目の前においたらどうなるか、想像もしたくない。
「バラされたくないことだけじゃなく、バラしてはいけないことまで口走ってくれそうだし」
 そう考えれば、キラがアークエンジェルに行ったのは正しいような気がする。
 もっとも、とレイは小さなため息をつく。
「あちらに行けば行ったで、胃が痛い思いをすると思いますし」
 キラの話では、バルトフェルドはラウを毛嫌いしているらしい。それも、まさしく害虫扱いでだ。しかし、ラウがキラから離れるとは思えない。
 もっとも、二人ともキラの性格は熟知しているし、彼に負担をかけようとすることをしようとは考えないだろう。
 それだけに、別の意味で怖いと思うのだ。
「……そうなんだよな。あの人のことだから、絶対爆弾を投下してくれるだろうし」
 そうなった場合、どうなるのか。
「ニコルなら耐えられるかもしれないが、俺はごめんだ」
 かといって、こちらもなぁ……とミゲルはまたぼやく。
「どちらがましかと言えば、キラがいる方かな」
「否定はしません」
 しかし、どうしてくれよう……とレイは呟く。
「適当なところで割って入れ、とルナマリアには頼んである。いくらあいつらでも女の子には直接手を出さないだろうからな」
 彼女には申し訳ないが、とミゲルは言う。
「確かに、彼女なら適任でしょう」
 しかし、とレイは続ける。
「ギルに文句のひとつでも言っていいですよね?」
 これからのことを考えれば、と口にした。
「議長にか? できるなら頼む」
 キラが動いた、と言うことは状況がまずい方向へ向かいつつあるのだろう。それがどちらに転ぶか。それは間違いなく自分達次第ではないか。
「ともかく、そのときまで俺たちは知らなかったことにしておいた方がいいかもしれないな」
 あの二人からの追求を考えれば、とミゲルは言う。
「でないと、今すぐ飛び出していきそうだぞ、誰かさんは」
 こうなると、イザークとディアッカも地上に降りてきてほしいくらいだ……と彼は続ける。そうすれば、押しつけられるだろうに、とも言う。
「まぁ、何とかするしかないわけだがな」
 ともかく、作戦に支障が出ないだけがましと妥協するしかないな。ミゲルはそう言う。
「いっそ、どちらかを捨ててきたい」
 ギルバートのところに、と彼は付け加えた。
「捨てるなら、アスランにしてください」
 シンはあれでも扱いやすい。キラのそばに置いておいてもコントロールできるだろう。
 しかし、アスランはどうだろうか。
「……そうだな」
 とりあえず、あちらには『アスラン注意報』でも出せるようにしておくか。ミゲルはそう言った。
「そうですね。それが一番だと思います」
 渓谷さえすれば、後はあちらで何とかしてくれるだろう。そう判断をして、レイもうなずき返した。

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最遊釈厄伝